今回はホテルプロジェクト(新築・改装共にほぼ同様とお考え下さい)における各種体制及び、キッチンデザイナー・コンサルタントとしての位置付についてお話したいと思います。
プロジェクトによって多少異なることもありますが、多くの場合は以下のような場合が多くなります。

ホテルといいましても様々なケースがありますが、当然ながら施主・オーナーが出資をすることになります。
その中で・・・
①施主・オーナーがホテルの運営も行うという、いわゆる日本的なスタイル
②施主・オーナーは出資はするものの、ホテル運営は委託するというスタイル
があります。
これは、海外有名ブランドであるハイアットグループ・スターウッドグループ・ヒルトングループ等を示しまして、それらのブランドを付することでサービス品質・集客力を強くすることが可能となります。
※上の体制表は②の時を示します
※一般の方々は各ホテルグループが出資しているように思われているかもしれませんが、実は少し異なります
我々はどちらのケースもお声掛け頂くことになりますが、後者のスタイルの時の方がよりこのような体制作りがしっかりしているように思われます。それは、投資額が大きいこと及び、海外的な思想(海外ではこのような体制が一般的)からきているものと思われますが、各専門家によるしっかりとした設計を行うこと、設計・施工社を明確に分けてコスト管理をしっかりと行う(入札を行い、施工費をより安価にする)ことが最大の目的といえます。
では、②の新築プロジェクトについて具体的にお話しましょう。
施主・オーナー
施主・オーナーも様々ですが、例えば投資会社・不動産会社他、ホテルとは縁遠いイメージの企業等もあります。
施主・オーナーは出資をすることをはじめ、ホテル設計の進捗に従って各種ジャッジをしていくことになります。そのため、建築・設備・内装関係に精通する担当者がいる場合もありますが、逆に建築関係については精通していない場合もあります。(プロジェクトによって異なります)
また、下記ホテル運営会社・各種設計会社・コンサルタントとの契約は施主・オーナーと締結することになります。
ホテル運営会社
前述の通り、海外有名ブランドをはじめとするホテル運営を専門とする会社であり、ハイアットグループ・スターウッドグループ・ヒルトングループ等が代表といえます(日本の会社もあります)。同会社は施主・オーナーから運営委託依頼を受け、各種諸条件をもとに契約をすることになりますが、施主・オーナー資産となる建物や厨房機器等については基本的に出資を行いません。ただ、運営は同会社が行うことから、それぞれのスタンダード(厨房でいえば、厨房施設の考え方や推奨機器メーカー等)を基準として建築・設備から厨房施設まで協働で作りあげていくことになります。
このような形態の場合、出資を抑えたい施主・オーナー、いいもの・運営しやすい施設・運営コストを抑えられる施設を作りたい運営会社といった構図となり、我々に限らず全ての設計関係者が板挟み的な立場となりますが、そこをうまく調整していくのも我々コンサルタントの役割となります。
※基本的には予算を握っている施主・オーナーサイドが強いということは一般論と同じです
プロジェクトマネージャー : PM
プロジェクトマネージャー : PMは施主・オーナーをサポートし、最も施主サイドに近い(施主代行ともいえます)存在です。
最も、重要な役割は予算管理・工程管理となりますが、その他にも各種設計会社・コンサルタント含めてのミーティング設定・各種調整・取りまとめを行います。
このように様々な知識が必要となるため、設計会社や不動産関係会社がプロジェクトマネージメント部署を有することが多いです。
施主・オーナーは、まずプロジェクトマネージャーを選び、プロジェクトマネージャーと一緒に各種設計会社・コンサルタントを選んでいくことになります。
建築・設備設計会社
当然ながら、新築の場合には建物を建てるわけですので、建築設計会社が中心となることは間違いありません。また、空調・電気・設備等の各種設備のインパクトは大きく、目立ちはしませんが施設を支える非常に重要な役割となりますので、建築と並んで中心となります。
したがって、これら基幹となる設計会社と内装設計会社・各種コンサルタントは各種相談・打合せをしていくことになります。
建築・設備設計会社は同一企業で行う場合もありますし、異なる場合もありますが、施主・プロジェクトマネージャーによって入札・選択されることになります。
※入札のために、各社提案を行うことになります
一連の設計業務の後、同建築・設備設計会社は施工会社を決めるための入札図書を作成→施工会社決定→施工監理を行っていくことになります。
内装設計・照明設計会社
建築設計は建物自体の設計となりますが、それらをいかに快適な空間とするかは内装設計会社に委ねられます。特にホテルは快適室内環境を提供することが大きな役割ですから、内装デザイナーのセレクトは重要といえます。建築・設備設計会社同様に、施主・プロジェクトマネージャーへデザインプレゼンをすることになり、海外デザイナー・日本人デザイナー等がしのぎを削ることになります。
また、内装設計と協働することになる照明設計会社もセレクトされることになります。小さな案件では、内装設計会社が照明も計画することになりますが、ホテル等ではより快適な空間とするためには欠かせない存在といえます。
建築・設備同様に、一連の設計業務の後、内装施工会社を決めるための入札図書を作成→施工会社決定→施工監理を行っていくことになります。
SPAコンサルタント
ラグジュアリーホテルには必須ともいえるSPAですが、これについても専門的知識が要されることからSPAコンサルタントが内装設計会社・ホテル運営会社と協働することで、計画を進めていきます。また、SPA運営を専門会社へ委託する場合には、それらのセレクト等も行うこともあります。
我々とはSPA内におけるパントリーやバー施設について少し関係があります。
その他設計者・コンサルタント
その他、ホテル施設に欠かせないIT関連・宴会場に付随する特殊設備・家具/備品等のコンサルタントと共に、我々は厨房設計者・キッチンコンサルタントとして各種専門設計を行っていくことになります。
その他、プロジェクトによっては各種コスト査定を行うコンサルタント・音響コンサルタント等も参加することになります。
キッチンコンサルタントの業務
我々は上記運営会社の中でもFB担当者(Food & Beverage : 料飲担当)とやりとりを行うことで設計を進めていきますが、ほとんどの場合は同担当者がアジア地域のマネージャーということ等が多く、いくつもの案件を抱えているためになかなかスムースに設計が進められないこともあります。また、各ブランドによってスタンダードがあります(日本で適用されないものも多々ありますが)ので、それらに準拠して設計していくことになりますが、各グループにおいても出店するホテルブランドによりランクがありますので、それらによってもスタンダードが一部変わってくることがあります。
※例えば上位ブランド(最上級クラス等)では、このメーカーの製品を推奨等・・・
また、ブッフェレストラン等については内装設計会社と一緒に設計を進めていくことになりますし、常に建築・設備設計者とはやりとり・調整を行うことになります。
これら図面の進捗と合わせて概算も行うことになり、施主・プロジェクトマネジャーと予算との整合性を合わせていきますが、ほとんどの場合にはVE(Value Engineering)・CD(Cost Down)という、メーカー変更によるコスト圧縮や一部プランの見直しによるコスト削減をしていくことになります。これが前述の板挟み的な状況・・・というものですが、ここをうまく切り抜けないとプロジェクトが前進しませんので重要なポイントとなります。
我々としては運営会社にとってより使いやすい厨房をつくりたいという思いが強いですが、契約は施主サイドと行っているわけですので、施主サイドの意向を反映する必要がある訳です。ここで、どのような落としどころを見つけるか・・・毎回の難しい局面といえます。
そして、おおよそ予算がクリアできるであろうと思われる図面までたどりついたところで厨房機器納入会社を決めるための入札図書をとりまとめ、各候補会社へ見積依頼をすることになります。同入札についても、予算関係ということからプロジェクトマネージャーが取りまとめることになりますが、専門的分野は我々がサポートすることになります。
厨房機器納入会社が決まった後は、建築・設備・内装施工会社が作成する施工図面の確認・調整及び、厨房機器納入会社が作成する各種設備要望図面や製作単品図の調整を行い、施工時には各種施工確認をします。
そして、諸官庁検査の立ち会い・引き渡し立ち合いということで業務完了となります。
キッチンコンサルタントの業務については厨房設計の流れも参照下さい。
いかがでしたでしょうか・・・
これからホテルプロジェクトに参加される方々に少しでも参考にして頂ければ幸いです。
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