厨房設計の流れ

では、今日は厨房設計を行う上での流れを説明しましょう。

 

ホテルプロジェクト・社員食堂・社内カフェ等、設計の流れについてはほぼ同じとなりますが、新築ホテルにおけるメインキッチン・各種レストランキッチンについて厨房設計業務依頼を受けた場合を例にとって話を進めます。大きな流れは以下を参照下さい。

動線確認

プロジェクトによって異なりますが、厨房設計の依頼を受けるタイミングとしては、おおまかな建築計画が決まった頃というのが多く、設備コアやエレベーターコア等の重要箇所の変更は難しいものの、それ以外はまだまだ変更可能という段階です。そこで、最初に行なうことは食材動線(食材搬入⇒キッチン)スタッフ動線メインキッチンと宴会場及び、バンケットキッチンとの動線・宴会場と洗浄エリアの動線メインキッチンとレストランキッチンとの動線等の確認及び、微調整となります。これらの動線がスムーズでないと開業後何十年にわたって運営サイドが苦労をすることになりますので、仮にこの時点で問題があるようであれば可能な限り改善を行っていきます。

ゾーニング・ブロックプラン

次に、全体の建築計画の中でおおまかにエリア区分がなされているキッチンエリアについて、上記動線計画ともリンクさせながら、キッチン内の各種ゾーンを決定していきます。メインキッチンを例にとりますと、野菜&果物・肉・魚の各下処理エリア、冷菜盛付(ガルデマンジェ)、加熱調理、器具洗浄、ベーカリー、パティスリーといった各種エリア(各エリアでプレハブ冷凍冷蔵庫も頭にいれる)をブロックとして配置していきます。いかに食材がスムーズに、戻ることなく一方通行に近い形で完成品をサービススタッフに受け渡しができるかがポイントとなるだけでなく、昨今では衛生区分についても非常に重要なポイントとなります。その他、各エリアのサイズバランスも重要になってきます。

 

この段階で、面積的に問題がありそう(面積不足)ということであればオーナーサイド(4/2の内容参照)及び、建築設計サイドと各種調整を行い、微調整を行っていきます。ちなみに、面積的に問題があるかないかという判断は、これまでの設計実績等から行います。

プログラミング

各種動線・ゾーニング・ブロックプランを行う段階にてオーナーサイドと打ち合わせを行い、およその合意がとれたところで厨房機器のプログラミングに移行します。プログラミングという意味は、宴会規模・レストランの客席数等に見合ったキャパシティの冷蔵設備加熱機器洗浄機器等を選定していくということです。例えば、1日における披露宴宴会規模を想定することで食材保管スペースを算定することに始まり、一度に行われる宴会が最大300人ということであれば、それに見合ったスチームコンベクションオーブンを設定する必要がありますし、1人あたりの食器・グラス想定数よりそれらを適切な時間で処理が可能となる洗浄機を選定しなければなりません。これら、重要ポイントとなる機器をしっかりと選定していくことで、厨房機器レイアウトの骨格をつくります

基本設計

上記プログラミングにより決定した機器を中心に、残りの厨房機器レイアウトを行います。最初の段階では平面図におおまかに機器名を記入する等して、オーナーサイド・シェフが見やすい図面を作成し、そこで様々な議論を行い、各種微調整を行っていきます。そして、何回かの打ち合わせを行い、方針を決めた後に機器リストを作成することになります。この機器リストはオーナーサイド・シェフが必要とするのも当然ですが、最も必要となるのは設備設計サイドといえます。まだまだ変更の可能性はあるものの、大まかなガス・電気・蒸気・冷却水・給排気等の必要容量から、おおもとの設備機器・配線配管ルート等を計画していかなければならないからです

 

厨房設計はこれら機器のレイアウトと思われがちですが、開業後に変更することが非常に難しい(大掛かり)箇所を設計する前述までの段階が最も肝になる(マクロ的な設計)といえ、ここからはミクロの設計といえます。

※プレハブ冷凍冷蔵庫等を除いて、将来的に厨房機器の入れ替え等は比較的行いやすいため

 

また、この段階で厨房機器・施行についての概算価格を算出することも必要となってきます。それは、建築・設備等の全体予算の中でのバランス調整等を図る他、プロジェクトの初期段階で設定(割当)された予算との整合性について確認するためです。ここで、大きくかけ離れているようだと各種機器の見直し等を行うことになります。

詳細設計

基本設計段階にて打ち合わせを重ね、次は高さ情報を示していくために展開図(機器等を正面から見た図面)・断面詳細図等を作成していきます。特にオーナーサイド・シェフは図面を見慣れているわけではない場合が多いですので、展開図等を見ることで平面図だけでは見えてこなかった問題点等を発見して頂くタイミングになります。また、断面詳細図は鉄板焼きやバーカウンター等、内装関係との取り合いを示すために必須となる図面であり、機器設置サイドの意向を示す重要なものとなります。

※この取り合いがうまくいかないと、最終的にいいものができあがりません

入札資料作成

これまでの図面を最終的にまとめると共に、・

1.各種選定した機器(機械)についてのカットシート・スペックシート(カタログや仕様書)を作成

2.作業台・シンク等のステンレス製作品の標準仕様書を作成

3.厨房機器リストを利用した金額入力シートを作成

4.建築/・設備サイドと厨房施工会社間の工事区分表

5.一般仕様書と呼んでいる書類(工事概要・工程・工事段階における注意事項等)

 

1については、カットシートについて、オーナーサイド・シェフに細かな仕様を確認頂くためにも重要です

2については、ステンレス製作品については平面図・展開図だけでは板材の種類・板の厚み・各所の折り方等が表現しきれませんので、何も指定しない場合には各社間での見積金額に差異がでてしまい、不平等となります。したがって、公平な見積競争を行うためには必須の資料となります。

3については、各社見積を並べて比較・分析・評価するための準備ともいえますが、これも重要なポイントです。

4についても、衛生配管や吊ボルト等の工事をどちらで行うかによって大きな差異が発生しますので、明確に示す必要があると共に、建築・設備・厨房施工のいづれにも入っていないと全体予算から抜けてしまいますので、それらを明確にするためにも必要となります。

 

建築ステンレス製作品については平面図・展開図だけでは板材の種類・板の厚み・各所の折り方等が表現しきれませんので、何も指定しない場合には各社間での見積金額に差異がでてしまい、不平等となります。したがって、公平な見積競争を行うためには必須の資料となります。


これらをまとめて、厨房機器入札資料パッケージを完成させます。

入札資料説明会・応札評価

入札資料をまとめた後、施設規模・地域等踏まえると共に、オーナーサイドと協議を行い数社の厨房会社に対して入札対応可能かの意思を確認後、説明会を開催することになります。

※厨房会社はいわゆる総合厨房会社を示します

※時と場合によって、説明会を行わず資料送付だけということもあります

※3社~多い時には5社以上

 

入札資料に対する質疑期間を終え、各社より見積書他、各種資料を指定期日までに提出して頂いた後、我々にて評価資料を作成してオーナーサイドと協議を行います。そして、厨房施行会社が決定することになります。

コスト・設計調整

ここからは、上記プロセスにて決定した厨房施行会社へ図面作成等の業務が移行します。基本設計段階での概算⇒入札を経て厨房機器・施行に関する価格は固まっていくことになりますが、必ずしもこのまま進むというものでもありません。ホテルを建築するには厨房機器だけでなく、建築・設備・内装・IT・家具・備品等様々なことも同時に進んでいますので、コストについても様々な調整を行う必要が発生してしまうということです。また、厨房同様に建築・内装についても施行図面段階に進むことで、厨房内についても様々な変更が発生することになるのが現場というものです。それ以外にもシェフサイドからの修正・要望事項もでてくる等、常に調整を行う必要があります。

 

コストについてはVE(Value Engineering)といいまして、性能はほとんど変更することなくメーカー変更等によって価格を少しでも下げるといったことを行ったり、さらに価格を下げるということになるとCD(Cost Down)まさにコストダウンのために機器を減らしたり、グレードを下げるといったことをシェフサイドと打ち合わせながら行っていきます。

 

大きなプロジェクトになればなる程このプロセスが大変となりますが、覚悟して望むしかないところです。

施工図確認

前述通り、我々の設計図書から厨房施行会社による各種施工図が作成されることになりますが、建築・内装施工図との整合性も踏まえ、適切に作図されているかを随時確認していきます。

各種施工図としては以下となります。

○平面図・機器リスト・展開図

○各種設備図面(排水・衛生配管・電気・吊ボルト・壁補強位置・排気フード位置・コンクリートベース位置)

○各種厨房機器単品図

 

また、プロジェクトによっては厨房エリアに関する各種建築・設備施工図の確認も随時行うことになります。

例えば

○床・壁・天井仕様及び、詳細図

○建具図

○側溝・グリストラップ

○照明・空調計画をはじめとした天井伏計画

○電話・POS関連

 

当然ながら、各種建築・設備・内装設計会社が各種施行会社作成図面をチェックしていくことになりますが、厨房エリアについては我々の方が知識・経験があるということで恊働していくように求められることが多く、そのことでより良い施設を作っていけると確信しています。

我々は厨房機器のレイアウトを行うだけというよりも、厨房にまつわる施設全体をつくっていくお手伝いをさせて頂いているといえます。

施工監理

前述の各種施行図面通りに現場施行されているのかを定期的に確認していくのが施行監理業務です。現場の施行状況が悪い場合には随時修正依頼をする等、密に現場サイドと会話をしていくこともより良い厨房施設を完成させるには大切なことです。

また、厨房機器については納入前に工場での検査も実施することにしております。そこで、入札資料に含まれる各種仕様書通りになっているか、単品図面通りになっているか等、様々なチェックを行い、是正すべきところがあれば、微調整をして頂きます。やはり、厨房機器を現場に設置してからではなかなか手直し等も難しいため、早い段階で悪いところの芽を摘むためです。

 

工場検査を経た厨房機器が現場に搬入・設置された後、厨房機器との配管接続等について打ち合わせを行うことになり、配管接続完了後に厨房施行会社と我々での自主検査を行います。そこで、是正すべきポイントをチェックし、各種微調整をして頂きます。そして、最後にオーナーサイド・シェフと共に最終チェックをすることになり、是正項目がでてきた場合には最終調整を行って頂くことになります。

 

また、消防検査・保健所検査等についても各関係者と共に立ち会いを行うことになります。

 

ここまできて、厨房機器はオーナーサイドに引き渡され、我々の業務も終了となります。

いかがでしたでしょうか・・・

厨房設計者は建築・設備・内装・オーナーサイド・シェフ等あらゆる方々と打ち合わせを行い、様々な知識を持ち合わせ、最適な提案をしなければいけない職種であり且つ、高度なバランス感覚を持ってプロジェクトを推進していかなければなりません。このことを少しでもご理解頂けますと幸いです。